経営管理ビザの省令改正で事業計画書の「中小企業診断士等による評価」が義務化へ|省令改正のポイントを解説
1. はじめに2025年8月、法務省による「経営管理ビザ」に関する省令改正案が公表され、大きな注目を集めています。これまで経営管理ビザの取得・更新においては、事業の安定性を示すために「第三者による評価書」が…
経営管理ビザの取得・更新には、事業の安定性と継続性を示すための資料が求められます。特に、直近の決算が赤字であったり債務超過の状態にある場合、審査が厳格になり、「経営改善の見通し評価書(以下、評価書)」の提出が必要となるケースがあります。本記事では、この評価書の概要から、求められる背景、作成時のポイント、そして提出後の対応までを詳しく解説していきます。専門家による作成が必須となるこの書類は、正確性と説得力が求められるため、内容を深く理解することが非常に重要です。
経営改善の見通し評価書は、経営管理ビザの更新審査時に赤字や債務超過といった経営上の課題を抱える事業者が、その将来的な改善可能性を第三者(中小企業診断士、公認会計士等)の立場から評価した文書です。単なる経営者自身の楽観的な予測ではなく、客観的かつ専門的な視点から「この事業は今後改善する見込みがある」と評価することにより、入国管理局に対して説得力のある説明材料となります。
評価書が特に必要となるのは、以下のようなケースです。
とくに2期連続で債務超過となっている場合、原則としてビザの更新は認められません。しかし、評価書により将来的な改善が明確であると判断された場合、例外的に更新が認められることがあります。これは経営管理ビザがあくまで事業の継続性を前提としたものであるため、改善の根拠をもって示すことで、その前提を満たすことができるからです。
この評価書は、単なる数値的な予測ではなく、事業の実態・市場環境・組織体制など多角的な視点から構成される総合的な評価である点が特徴です。したがって、表面的な改善計画ではなく、実行可能性の高い戦略と具体的な行動計画が求められます。
法務省および出入国在留管理庁のガイドラインにおいて、経営管理ビザは「安定的かつ継続的に事業が行われること」が前提とされています。このため、財務状況が不安定な場合には、今後も事業が存続できるかどうかが厳しくチェックされます。
債務超過や赤字である場合でも、必ずしも更新が不許可になるわけではありません。その事業に改善の見込みがあるかどうか、実現性のある計画が存在するかどうかが審査のポイントとなります。
たとえば、以下のような状況において評価書が特に重視されます:
このようなケースでは、単に「売上が上がる予定」と主張するのでは不十分です。入国管理局は、数字的根拠、戦略の妥当性、市場の客観的分析に基づく説明を求めています。
また、2023年以降は「専門家による第三者評価の有無」が重要視される傾向にあります。特に入管審査官は財務分析や事業計画の妥当性を自ら判断することが難しいため、専門資格者の署名付き評価書の信頼性が審査の決め手となる場合が増えています。
2025年8月、法務省による「経営管理ビザ」に関する省令改正案が公表され、事業計画書の中小企業診断士等による評価がすべての申請において義務化される見通しとなっています。
評価書には、以下のような構成が一般的です。
まずは、現在の経営状況を正確に把握するための分析が行われます。ここでは、以下の視点から整理することが求められます:
この分析により、現在の赤字・債務超過の背景がどこにあるのかを客観的に説明する土台ができます。
次に、経営上の課題を明確にします。
これらの課題は、単なる数字の話ではなく、経営実態に即した具体的な原因として言語化することが求められます。
ここが評価書の中核となる部分です。改善策としては、以下のような内容が挙げられます:
これらの施策については、具体的な数値目標、スケジュール、体制、必要コストと収益見込みを盛り込みます。
さらに、過去に実行してきた取り組みとその成果を示すことで、「実行力がある企業」であることを裏付けるエビデンスとなります。
説得力を高めるポイントとして、以下が重要です:
特に入管は、将来の利益を過大に見積もる資料を警戒するため、保守的な予測に基づき、着実な改善計画を提示する姿勢が評価されます。
評価書の作成には、段階を追った丁寧なプロセスが必要です。単に事業計画を提示するだけでなく、現状分析から改善方針、そしてその実現可能性まで一貫性のある構成に仕上げることが求められます。
評価書作成にあたっては、以下の資料を揃える必要があります。
これらをもとに、現状の財務状態や営業実態を明確にしていきます。
評価書は、中小企業診断士、公認会計士、税理士などの国家資格保有者によって作成・署名されることが必須です。自身で作成した資料をもとに、専門家の意見を加える形が一般的です。
専門家は、単なる代筆ではなく、内容の妥当性をチェックし、必要に応じて改善提案を加えていきます。したがって、専門家選びは慎重に行い、入管向けの評価書実績がある方を選ぶと良いでしょう。
評価書で陥りやすい誤りには以下があります。
これらを避けるためには、裏付けのある資料を添える、ストーリー性を持たせる、そして第三者の目線で見直すことが重要です。
評価書を提出した後は、入国管理局による書面審査が行われます。必要に応じて、追加資料の提出を求められることもあります。
審査では以下の点が重視されます:
特に計画倒れになっていないか、形骸化した内容でないかという点が問われます。
また、審査期間中に以下のような対策を講じることも有効です。
評価書を出しても、それだけでビザが更新されるとは限りません。継続的な行動とその証明資料をそろえることで、より審査通過の確率が高まります。
近年では、評価書の作成を専門とする事務所や支援機関が増えています。そのなかで、信頼性の高い評価書を提供するためには、以下のような差別化要素が重要です。
特に2023年以降は、2期以上連続で債務超過でも、設立5年以内や、技術的に独自性のあるビジネスである場合には更新が認められた例もあります。これらの事例を把握しておくことは、評価書作成において大いに参考になります。
経営管理ビザにおける「経営改善の見通し評価書」は、単なる形式的な書類ではなく、事業の継続性と将来性を客観的に示す重要な根拠資料です。赤字や債務超過といった厳しい経営状況であっても、改善可能性と実行力があることを明確に伝えることができれば、ビザ更新が許可される可能性は十分にあります。
そのためには、正確な現状分析、具体的な改善計画、そして専門家による信頼性の高い評価が不可欠です。評価書の質は、そのまま審査結果に直結するため、しっかりと準備し、信頼できる支援を受けることが肝要です。
「2期連続赤字」「債務超過」でビザ更新が不安な方へ
改善可能性を正しく伝えることができれば、ビザ更新のチャンスは残されています。
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